休職に必要な手続きとは?流れと対応を解説
会社の人事労務担当者は「従業員の健康の保護と福利の向上」という重要な業務を担っています。
休職手続きもその一つであり、家庭の事情や急な病気、メンタル面、体調の不調などさまざまな理由で従業員が長期間就労できなくなった場合、休職制度を利用して従業員に休職をとってもらうことになります。
この記事では、「私傷病休職」の休職手続きの流れや必要書類、注意点、効率化の方法などを解説します。
目次
1. そもそも休職とは
休職(きゅうしょく)とは、会社に雇用されている従業員が一定の期間仕事を休んでいる状態です。
休職中も従業員は会社との間に雇用契約が継続している状態になっています。 通常、休職中は給与が支給されません。
一部支給の場合も、支給の条件は会社の就業規則などによって異なります。
休職は従業員が心身の健康を回復させたり、自己研鑽・自己実現を行うことができる制度です。
特に私傷病休職は従業員の健康を回復させ、仕事に戻るための時間と余裕を持つことができる重要な手段です。
休職の種類
休職する理由はさまざまだと思いますが、理由によって休職の種類が分けられます。
例えば、私傷病休職、自己都合休職、会社都合休職、事故欠勤休職、起訴休職などが挙げられます。
私傷病休職
私傷病休職は、従業員の疾病や負傷による休職です。
従業員の健康を保護し、治療や回復のための時間を確保することが目的です。
ここで注意すべきことは、業務に何かしら関連がある病気や怪我の場合は休職ではなく、労災休業になります。
例えば、勤務中に事故や怪我を負った場合や職場環境が起因の病気などは労災扱いです。
業務と関係のない怪我や病気が私傷病休職となるので注意をしましょう。
自己都合休職
自己都合休職は、従業員自身の都合による休職です。
ボランティア活動や留学などの個人的な理由による休職の申し出を会社が承認した場合に適用されます。
また、従業員が公職(議員など)に就くことを申し出・承認された場合で、会社への労務提供ができない期間を「公職就任休職」とするケースもあります。
一般的に休職期間中は給与の支給は行われません。
ですが、社会保険の加入は継続となるため、保険料の支払いは発生するので手続きに注意しましょう。
会社都合休職(出向休職、組合専従休職)
調整休職は、他の制度との調整をするために休職扱いとすることです。グ
ループ会社や関連の組織に出向する場合に所属元の会社を休職扱いにする「出向休職」や、労働組合の活動に専念するための「組合専従休職」などがあります。
事故欠勤休職
事故欠勤休職は、上記に挙げた私傷病・自己都合休職事由以外の自己都合による長期の休職です。 「
事故」という名称ですが、従業員が刑事事件を起こし逮捕・勾留され、長期欠勤する場合などに適用されることが多いです。
起訴休職 起訴休職は、従業員が刑事事件で起訴された場合に仕事を休む制度です。
2. 従業員が休職する際の手続きの流れ
では、従業員から「休職したい」と申し出があった際にどのような対応が必要になってくるのでしょうか。休職制度は、取得義務が法律で定められていたり、定義があるわけではないので、会社の就業規則に則って対応をする必要があります。ここでは「私傷病休職」で休職する際の一般的な手続きの流れについて説明をします。
休職届(休職願)の受理
診断書を提出してもらう
診断書をもとに従業員と面談
休職開始
定期的な連絡と復職相談
休職期間満了 (復職ができる場合)
休職期間満了 (復職ができない場合)
休職届(休職願)の受理
従業員から休職の申し出があった場合、まずは自社の就業規則に定められた休職に関する規定を確認しましょう。確認ができたら、休職届(休職願)の提出を依頼します。休職願には休職期間や休職の理由、休職中の連絡先などを記載してもらうようにしましょう。休職理由から休職制度の対象となるか、またどの休職に該当するか・会社が認める休職期間はいつまでかなどを確認をしておきましょう。
診断書を提出してもらう
休職の理由が私傷病の場合は、主治医の診断書を提出してもらう必要があります。診断書は、従業員が休職する理由や期間を判断する重要な情報源となります。診断書は即日発行されることもありますが、場合によっては数週間かかることもあるので注意をしましょう。
診断書をもとに従業員と面談
診断書をもとにご本人と面談を実施し、休職の希望、復職の意思など、本人の意見を確認しましょう。 また、休職中の連絡方法や症状の経過報告(1ヶ月ごとの診断書提出にて結果報告など)についても決めておくとよいです。休職中の社会保険料や傷病手当金についても従業員に話をしておきましょう。その他に、復職が叶わなかったときの処遇についても、トラブル回避のため伝えておくようにしましょう。従業員が入院をしたり、傷病の状況によっては、家族とのやり取りが必要な場合がありますので、面談実施には注意を払いましょう。 面談後、休職の可否や期間を決定し、休職辞令を発行します。
定期的な連絡と復職相談
休職前に取り決めをした頻度と連絡方法で定期的に連絡をとりましょう。時期をみて復職に向けた相談を開始します。本人から復職の希望があったとしてもすぐに復職日を決めるのではなく、主治医や産業医の許可を得た上で復職の判断をしましょう。
休職期間満了(復職ができる場合)
私傷病休職は、一定の休職期間を定めて取得します。期間満了となったら本人と相談した上で、職場復帰可能の診断書を基に職場復帰を行います。 復職後の就労について配慮が必要かどうか主治医や産業医の意見を参考にし、最初はできるだけ負荷の少ない業務を任せたり、短時間勤務から復帰させたりするなど慎重に判断してください。 また、復職時の処遇の変更により、部署異動や給与などの変更が必要な場合もありますので、本人と協議のうえ労働条件変更通知書の交付なども行いましょう。
休職期間満了(復職ができない場合)
中には順調に回復できず予定通り復職できない場合もあると思います。 その場合、休職期間の延長や退職などの対応が必要になります。 休職に入る前に、復職、休職期間の延長、休職に伴う退職について就業規則を確認しておくと良いでしょう。
3.従業員が休職する際の手続きに必要な書類
私傷病休職の手続きには、以下のような書類が必要です。
休職届 医師の診断書
休職辞令
休職に関する確認書
休職者近況報告書 復職願 復職に関する確認書
これらの書類は、休職手続きの正確性や正当性、透明性を確保するために重要です。
4. 休職手続きを行う際の注意点
休職の手続きを行う際に、以下の点にも注意をする必要があります。
給与の個人負担に関する対応
休職中、従業員は会社に所属しているため社会保険料や住民税の個人負担が発生します。
就業中は給与から控除されますが、休職中は原則、給与が支給されないため、別途従業員に支払いをしてもらう必要があります。
従業員にその旨を説明し支払い方法を決定しましょう。
傷病手当金の手続き
休職中は原則、給与の支給はありませんが、健康保険に加入していることで、一定期間傷病手当金を受け取ることができる場合があります。
傷病手当金とは、病気や怪我で働けない従業員の生活を支えるために協会けんぽや健康保険組合から支払われる手当金です。
傷病手当金を申請する際は、「健康保険傷病手当金支給申請書」を作成し、会社が協会けんぽや健康保険組合に提出する必要があります。
従業員に必要事項を記入してもらい(医師意見欄は主治医に記入依頼)、人事労務担当者が手続きを行いましょう。
5. 休職手続きの漏れを防ぎ、効率化するには?
休職手続きには、確認しなければならない事項やタスクが多く発生します。
しかし、不安を抱える従業員に対して、スムーズかつ正確に手続きを行う必要がありますので、手続きの漏れを防ぎ、効率化するためには、以下のような方法がおすすめです。
チェックリストの作成
休職手続きに必要な書類や手順をまとめたチェックリストを作成することで、漏れやミスを防ぎます。
自社の制度や規則を確認しながらタスクの棚卸しをすると良いです。
コミュニケーションの強化
休職する従業員との連絡はもちろん、従業員が所属している部署の責任者や関係各所と連携を取る必要があります。
担当者を明確に決め、定期的に情報共有ができるようにしておきましょう。従業員のプライバシーに配慮することも重要です。
手続き対応に特化したシステムの活用
休職手続きを効率的に管理するための専用システムやツールを活用し、手続きの追跡や管理をしましょう。
弊社が提供する「mfloow(エムフロー)」は、休職で発生する手続きを始め、入社・退社など従業員が働く上で発生する従業員の「ライフサイクル」手続きを一元管理できるクラウドツール(SaaS)です。
担当者が対応すべき業務・タスクを簡単に可視化・一元管理することができるようになります。
「mfloow(エムフロー)」は休職手続きをはじめとした手続き業務で発生しがちな「タスク漏れによる遅延」「連携ミス」「業務の属人化」を防ぎ、シームレスな情報の共有と蓄積を実現し、タスク管理に伴うストレスからの解放を目指しています。
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5. まとめ
従業員にとって私傷病休職は、心身ともに良好な状態にするために重要な期間となります。 休職は法律で一律の規定があるわけではないため、従業員から休職の申し出があった際に慌てないよう、 自社の制度や就業規則を適切に定めておくことが重要です。また、自社で必要な手続きの洗い出しや、タスクの整理、可視化をしておくことをおすすめします。 従業員が休職期間を療養に専念できるように、十分に準備をしておくと良いでしょう。